本年度より、稲盛財団は京都市交響楽団や招聘アーティストと協同して、文化芸術振興を目的としたプログラム「INAMORI ミュージック・デイ」を始めました。このプログラムは、市民や学生のみなさまに、文化芸術のすばらしさを再発見し、人生をより豊かにするための機会を提供したいという思いから生まれました。
11月3日「文化の日」開催の京都市交響楽団と招聘アーティストによるコンサートを核として、美術館でのミニコンサート、学校への出張コンサート&レッスンといったイベントを催しました。
「INAMORI ミュージック・デイ 2022」コンサート in ロームシアター京都
世界で活躍する、京都にゆかりのある二人の若手音楽家、杉本優さん(指揮)と周防亮介さん(ヴァイオリン)、そして京都市交響楽団との共演が実現しました。公演に先立って二人によるプレトークが行われ、互いの共通点や音楽を始めたきっかけ、演目の聴きどころなどを軽妙な語り口で説明し、場を温めました。
コンサートは京都市交響楽団の常任指揮者を務めた経験もある日本を代表する音楽家、外山雄三作曲の「京都幻想」の深い哀愁に満ちた鐘の音から始まり、ソリスト周防さんを交えたコルンゴルト作曲の「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35」へと続きました。周防さんの甘美な、時に激しい演奏に拍手が鳴りやまず、アンコールに応えて演奏したF・タレガ作曲(R・リッチ編曲)の「アルハンブラの思い出」ではギター曲として有名な本曲を超絶技巧で情感たっぷりに奏であげました。
最後の演目、ベートーヴェンの「交響曲 第7番 イ長調 作品92」では、京都市交響楽団の重厚で壮大な演奏と、音楽と一体化したような杉本さんの躍動的な指揮に、聴衆の耳ばかりでなく目も釘付けになっていました。アンコールでは先日逝去した稲盛財団創立者、稲盛和夫への哀悼の意を込めてシューベルトの「劇音楽『ロザムンデ』から間奏曲第3番」が演奏され、幕となりました。
「INAMORI ミュージック・デイ 2022」ミニコンサート at 京都市京セラ美術館
メインコンサートに先立ち、10月15日(土)、26日(水)、28日(金)の三日間、京都市交響楽団のメンバーが京都市京セラ美術館の中央ホールにてアンサンブルを披露しました。(各回の演奏者はこちら)美術鑑賞に訪れた人に音楽への偶然の出会いを提供するというコンセプト通り、多くの人がホールで足を止めて聴き入っていました。ミニコンサートではクラシック音楽に交えて、誰もが耳にしたことのある映画音楽やポピュラー音楽も演奏され、休日であった10月15日のみならず、平日公演となった26、28日でもホールは大盛況となりました。素晴らしい演奏に、いずれの回も会場は盛大な拍手に包まれました。
「INAMORI ミュージック・デイ 2022」スクールコンサート&レッスン
メインコンサート翌日の11月4日、杉本優さんと周防亮介さんが京都府立亀岡高校を訪問し、体育館でコンサートを行いました。今回、杉本さんはピアニストとして、亀岡市出身でもある周防さんのヴァイオリンと共演しました。「愛の喜び」をはじめとしたクライスラー作曲の小品3曲に続き、メインコンサートでアンコール曲として披露した「アルハンブラの思い出」、続いてマスネ「タイスの瞑想曲」、最後にヴァイオリンの技巧を駆使した情熱的な曲、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」を披露しました。目の前で繰り広げられる世界レベルの演奏に、生徒たちは終始熱心に耳を傾けていました。演奏の合間のトークでは「クラシック音楽もかつては現代のポピュラー音楽のように気軽に聴かれるものだった。これを機会に皆さんも気軽に演奏会に足を運んでもらえるとうれしい」などと、クラシック音楽の魅力について語りました。
コンサートの後、亀岡高校吹奏楽部、続いて合唱部の皆さんへ、杉本さんによる指揮を交えてのレッスンが行われました。曲やフレーズの解釈にまで立ち戻っての指導に、生徒たちは真剣な眼差しで耳を傾け、演奏や歌唱を通じて応えていました。
(12月2日追記)イベント後、亀岡高校の生徒たちからは、コンサートについて「生の演奏はやはり言葉に出来ない感動があり、音楽の素晴らしさを再発見することが出来ました」「世界で活躍されているお二人の演奏を聴けて良かった。クラシック音楽は遠い存在だったが、少し身近になった」、またレッスンについては「技術面だけではなく、音楽をする上での大切なことをたくさん教えていただきました」「歌詞を知識だけで終わらせるのではなく、自分で解釈を膨らませることで深みのある歌になることに気づけました」など、たくさんの感想・感謝のお便りをいただきました。