稲盛財団は、5月22日、2024年度の稲盛科学研究機構(InaRIS: Inamori Research Institute for Science)フェローシップの申請受付を開始しました。
InaRISは、短期的に成果を求めるのではなく、好奇心の赴くまま存分に、壮大なビジョンと大きな可能性を秘めた研究に取り組んでもらおうと、2019年に設立されました。1人につき10年間継続・総額1億円の助成を行います。プログラム設立から5年目を迎える現在は、8名のフェローがそれぞれに新たな展望の可能性を追求する研究に取り組んでいます。
今年度の募集対象は「異分野コンバージェンスによる革新的医療の創出」で、2名の採択を予定しています。募集要項や申請要件については、稲盛科学研究機構「InaRIS」のページをご確認ください。また募集対象の説明動画 も併せてご覧ください。
分野コンバージェンスによる革新的医療の創出
医学とは、概して生体の構造や機能(生理学)と、疾病の発症・進展因子(病態生理学)について研究する学問であり、疾病の予防および治療によって健康を維持、および回復するために発展した様々な医療を包含します。すなわち医療の進歩・発展には医学の探求が必須であり、現在の臨床で標準医療として用いられているものは、先人の基礎医学研究をもとに社会実装されたものです。
医療は日々大きく進歩してきていますが、いまだ予防法や治療法のない疾患や、アンメットメディカルニーズも多くあるのが現実です。現在の医療にブレークスルーをもたらすのは、基礎科学における革新的イノベーションです。パンデミックを引き起こした新型コロナウイルスに対するワクチンの迅速な開発には、長年にわたる生体へのmRNAデリバリー技術の研究が大きく貢献しました。また、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集技術は、遺伝性疾患への治療応用に向けて臨床試験が進められています。
革新的イノベーションは、単一の学問領域で起こることは極めて稀です。近年、従来は互いに接点のない異なる分野や技術が、特定の目的を達成するために融合・統合しながら新しい分野や技術を確立させていく、科学研究の新モデル「コンバージェンス(収斂)」が注目されています。情報技術、材料および関連分野のコンバージェンスが物理科学に変革をもたらしたように、遺伝子工学、ナノテクノロジー、認知科学、ロボット工学といった最先端テクノロジーと医学研究とのコンバージェンスにより、パラダイムシフトが促され、新しい医療を生み出すことができると考えています。
このような現状を鑑み、常識に縛られることなく、10年先あるいはその先を見越して、以下のような視点を通じて、医療の進化を目指す卓越した研究提案を募集します。
- 人類、社会にとって、「医学・医療」の究極のゴール(ビジョン)は何か、また現在の医療におけるアンメットメディカルニーズを明確にする。
- アンメットメディカルニーズを満たすために、既存技術の単なるアップデートではなく、どのような分野・技術のコンバージェンスが必要となるかを明確にする。
- コンバージェンスによる革新的イノベーションを医療として社会実装するための真の課題とその解決法を明確にする。社会実装のために新たなコンバージェンスの必要性も考慮する。
*7月28日更新 2024年度InaRISの申請受付は終了しました。多数のご応募ありがとうございました。