公益財団法人稲盛財団(理事長 金澤しのぶ)は3月14日、2025年度稲盛科学研究機構(InaRIS: Inamori Research Institute for Science)のフェローを発表しました。2025年度InaRISフェローは、「数学の深化と展開」で公募を行い、29名の応募者の中から、戸田幸伸氏(東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構・教授)と平岡裕章氏(京都大学高等研究院・教授)の2名が選ばれました。
2025 InaRIS Fellow
戸田 幸伸 Toda, Yukinobu
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構・教授
研究テーマ | 圏論的 Donaldson-Thomas 理論を通じた新たな研究領域の開拓 |
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研究の概要 | Donaldson-Thomas不変量とは複素3次元カラビヤウ多様体上の球面やドーナツ型の曲面などの幾何的対象を仮想的に数え上げる整数であり、数学・理論物理双方にとって重要な研究対象である。一方、「圏」とは数学的対象物たちの織り成す一種のコミュニティーとみなせる、抽象的な数学概念である。これまでの研究では圏を用いて不変量のさまざまな性質の解明や予想の証明を与えてきた。本研究では、不変量そのものを復元する圏を構成し、非可換空間とみなして詳細に調べることにより、さまざまな数学分野を繋ぐ新たな研究領域を開拓していく。 |
2025 InaRIS Fellow
平岡 裕章 Hiraoka, Yasuaki
京都大学高等研究院・教授
研究テーマ | 数学からヒト生物学への挑戦 |
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研究の概要 | 近年の生物学では網羅的実験によって膨大なデータが生成されているが、そこから生物学的原理を見出すことを可能にするデータ解析手法が不足している。種ごとの内在的データ構造および種間の相対関係を明らかにすることで生物学的知見を深めていくが、これは数学的にはデータが定める空間や写像の不変量を抽出することに対応する。本研究では「What makes us human?」という生物学的な問いに対して、種差表出原理を解明する数学的データ解析手法の開発に取り組む。 |