昨年に引き続き、稲盛財団は京都市交響楽団や招聘アーティストと協力して、文化芸術振興を目的としたプログラム「INAMORI ミュージック・デイ」を開催しました。このプログラムは、市民や学生のみなさまに、文化芸術のすばらしさを再発見し、人生をより豊かにするための機会を提供したいという思いから生まれました。
11月3日「文化の日」開催の京都市交響楽団と招聘アーティストによるコンサートを中心として、美術館でのミニコンサート、学校への出張コンサート&レッスンといったイベントを催しました。
「INAMORI ミュージック・デイ 2023」コンサート in 京都コンサートホール
本年のコンサートは、京都北山の京都コンサートホールで開催しました。本年は指揮者に坂入健司郎氏、ソリストにチェロ奏者の佐藤晴真氏を招聘しました。坂入氏は一般の大学を卒業後、会社員として働くという、指揮者としては異色の経歴を持ちつつ、2008年より東京ユヴェントス・フィルハーモニーを結成し、世界的なソリストとも多数共演している新進気鋭の指揮者です。佐藤氏は2019年に日本人として初めてとなるミュンヘン国際音楽コンクール チェロ部門での優勝をはじめとした多数の受賞歴、国内外の主要オーケストラとの共演歴を持つ、若い世代を代表するチェリストです。
演奏に先立って、坂入氏と佐藤氏によるプレトークが行われ、数日前にスクールコンサート&レッスンで訪れた西舞鶴高等学校での生徒達との交流、これから演奏する曲目の解説などをカジュアルな雰囲気で語り、場をあたためました。
コンサートは京都にゆかりのある曲、林光作曲「吹きぬける夏風の祭」の、古い子守歌やわらべ歌のモチーフが時折見え隠れする幻想的な響きで幕を開け、続いてチェリストの佐藤氏を加えてサン・サーンス「チェロ協奏曲 第1番 イ短調 作品33」が演奏されました。ときに激しく、ときに悲愴に、オーケストラに乗せて奏でられるチェロの深く甘美な音色が聴衆を魅了しました。熱烈な拍手に応えて、アンコールではバッハ「無伴奏チェロ組曲 第1番より サラバンド」の独奏が披露されました。
後半はラヴェル「道化師の朝の歌」「古風なメヌエット」「ボレロ」が続けて演奏されました。「ボレロ」ではスネアドラムが刻む時計仕掛けのようなリズム、そして次第に迫力を増してゆく楽曲に聴衆の興奮は高まり、最後のフォルテシモでホールは熱狂に包まれました。アンコールでは同じくラヴェル作曲の「亡き王女のためのパヴァーヌ」が、ラヴェル本人編曲によるオーケストラ版で演奏されました。
「INAMORI ミュージック・デイ 2023」ミニコンサート at 京都市京セラ美術館
10月15日、17日、24日には、京都市京セラ美術館の中央ホールにて京都市交響楽団のメンバーによるアンサンブルが奏でられました(各回の演奏者はこちら)。各開催日ではそれぞれ個性豊かな編成のアンサンブルが出演し、クラシックの名曲だけではなく、有名なポピュラー音楽やジャズのスタンダード曲など、ジャンルを超えた曲の数々が披露されました。いずれの回もホールは盛況となり、ホールに集ったたくさんの人達は、満たされた表情で音楽に聴き入っていました。
「INAMORI ミュージック・デイ 2023」スクールコンサート&レッスン
10月31日、指揮者の坂入氏とチェリストの佐藤氏が京都府立西舞鶴高等学校を訪問しました。まずは佐藤氏の独奏によるチェロ曲が披露されました。最初にバッハ「無伴奏チェロ組曲第1番よりプレリュードとジーグ」が演奏され、佐藤氏の奏でるたった一挺のチェロの深い音色に、いつもの体育館がコンサートホールになったかのようでした。次に演奏されたマーク・サマー作曲のジャズ曲「Julie-O」では変幻自在の奏法を披露しました。チェロの演奏を初めて生で聴いた生徒も多く、美しい音色と、チェロという楽器の可能性に新鮮な驚きをもって感動している様子でした。
続き、坂入氏による吹奏楽部の演奏指導が行われました。ホルスト作曲の「吹奏楽のための第1組曲」からの抜粋を題材に、楽曲や生徒への親しみを込めた表現で曲の解釈や演奏の方法を熱心に伝えました。30分という短い時間ながら、ダイナミックな指揮やユーモアを交えた演奏指導によって、演奏している吹奏楽部員たち自身にも、聴いていた生徒や先生方にも、演奏がより生き生きとしたものに変わっていく様子だけでなく、坂入氏の音楽を心から楽しむ気持ちが伝わりました。
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