2月3日、JPタワー ホール&カンファレンス(東京・千代田区)にて、第10回京都大学―稲盛財団合同京都賞シンポジウム(KUIP)が開催されました。今回のテーマは「材料科学がひもとく未来の姿」。未来を変える新しい材料について、その科学的基礎から性質の特長、産業への応用、そして未来社会を変える展望まで、ときに偶然や失敗からの大発見など、ユーモアを交えた研究の苦労話もはさみつつ、3人の研究者が熱く語りました。
京都大学大学院工学研究科の木本恒暢教授はケイ素(Si)に代わる新たな半導体材料、炭化ケイ素(SiC)を用いたパワー半導体について、京都大学化学研究所の小野輝男教授は電荷とスピン(電場と磁場)をあやつる電子技術スピントロニクスについて、そして京都大学生存圏研究所の矢野浩之教授は植物由来でCO2排出を減らすことができ、かつ鋼鉄の1/5の軽さで7-8倍もの強度がある素材、セルロースナノファイバーについて講演しました。
講演ののち、サイエンスライターの吉成真由美さんをモデレーターに迎えパネルディスカッションが行われ、材料科学が将来の社会や経済にもたらすものなどについて、それぞれの登壇者が持論を展開しました。ディスカッションの最後には吉成さんが参加者からの質問を紹介、「材料科学を学ぶにはどの学部に行けばいいんでしょうか」との高校生からの問いに、木本教授は「理学部でも工学部でも、農学部でも学ぶことができますが、基礎学理を学びたいなら理学部に、応用に興味があるなら工学部に、というように自身の興味に合わせて選んでください」とアドバイスをしていました。
参加した高校生からは、「炭化ケイ素デバイスの導入で原子力発電所何基分もの電力が節約できるという話を聞いて、一つの素材が今ある社会課題を一気に解決できうることに驚いた」「工学部進学を志望していたが、もともと木造建築に興味があったこともあり、今回セルロースナノファイバーの可能性を聞いて農学部にも興味がわいた」といった感想をいただきました。
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