井川 敬介 Keisuke Ikawa

名古屋大学大学院理学研究科助教※助成決定当時

2025稲盛研究助成生物・生命系

採択テーマ
不均一ながん微小環境で引き起こされる細胞間相互作用機構の解明
キーワード
研究概要
がん原性細胞を取り巻くがん微小環境では、変異による遺伝的変化に加え、免疫細胞の集積などの周辺環境の変化を通じて不均一性が獲得・増強されることがわかってきた。しかしながら、不均一ながん微小環境で生じる複雑な細胞間相互作用の全貌と、そのがん成長への関与は未解明である。本研究では、空間トランスクリプトームを実施し、がん微小環境における局所的な細胞間相互作用を明らかにすると共に、遺伝学的解析やライブイメージングを実施することで、不均一ながん微小環境で引き起こされる腫瘍成長制御の分子基盤の解明を目指す。

助成を受けて

我々の研究グループは、ショウジョウバエ上皮に誘導した悪性腫瘍モデルを用い、細胞間相互作用を介したがん制御機構を生体レベルで解析してきた。その中で、「死にゆく悪性腫瘍細胞を貪食したマクロファージが、周囲の生きている悪性腫瘍の細胞増殖を促す」という新しい現象を見いだした。これは、腫瘍成長に伴い生じたマクロファージ・腫瘍細胞間の局所的な相互作用が、同時多発的ながん促進シグナルの活性化を引き起こし、このシグナルが腫瘍組織全体へと伝搬して腫瘍成長を引き起こすものと考えられた。この発見を基盤として、空間トランスクリプトーム、遺伝学的解析、ライブイメージングを駆使し、がん微小環境における局所的な細胞間相互作用の全貌に迫りたい。

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