慶應義塾大学 医学部助教※助成決定当時
2022稲盛研究助成生物・生命系
この度は採択いただき、有難うございます。臓器間を繋ぐ免疫細胞や液性因子に着目して研究を行っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
社会的孤独はヒトにおいて虚血性心血管疾患のリスクとなることが報告されていましたが、その詳細な機序は明らかになっておりませんでした。我々は動物モデルを用いて臓器横断的に検証し、これまで推定されていた食事摂取量の増加、交感神経系、視床下部-下垂体-副腎皮質系および炎症の賦活化とは無関係に、社会的孤独ストレスが動脈硬化を進行させることを見出しました。またその機序として、脳視床下部で産生されるオキシトシンによる肝細胞を介した脂質代謝制御機構が破綻することが原因であることも明らかにしました。さらに、オキシトシンを経口補充することで、社会的孤独ストレスによる脂質代謝異常と動脈硬化進展が抑制されることを確認しました。本研究は、幸福ホルモンとして知られるオキシトシンが孤独による動脈硬化進展に対する新規治療標的分子として有望であることを示すとともに、社会的つながりの豊かさがヒトの健康維持につながる機序の一つを解明したと考えられます。
Ko S, et al. (2025) Social Bonds Retain Oxytocin-Mediated Brain-Liver Axis to Retard Atherosclerosis. Circ Res 136(1):78-90. doi: 10.1161/CIRCRESAHA.124.324638. Epub 2024 Nov 27. PMID: 39601150
生物・生命系領域