紛争を生き抜いた”様々な”人々と向き合う覚悟を持ちながら研究を進めていきたいと思っております。いつかは「人のため、世のために役立つ」研究成果を残してきたと言えるよう、今回の助成で頂いた機会を最大限に生かし取り組む所存です。
本研究は、紛争後の平和構築という課題に対し、国際刑事裁判所による司法介入によってもたらされる「レガシー」とは何か、そして、その実態を明らかにすることを目的としています。本研究期間では、新型コロナウィルスの影響によって現地調査が実施できず、文献調査に基づくレビューを重ねましたが、この期間に、国際刑事裁判所の司法介入後にアフリカでみられるようになった「司法化」の現象に着目することができ、アフリカでも法が巧みに活用されながら、①アフリカ域外との交渉を試みたり、②自身の影響力を、選挙をめぐる裁判を通して行使しようとしてきた実態を解明しました。
具体的に、①については、地域機構であるアフリカ連合での議論から国際刑事裁判所に対するアフリカの対外政策の変容を明らかにし、国際機構に影響力を行使しようとするアフリカの姿を捉えました。②については、ケニアの単一事例研究に取り組み、国際刑事裁判所が司法介入を行った後の社会の変化と制度構築によって司法の場での争いが急増したが、これが2022年8月に予定されている大統領選挙にどのような影響を与えているのか、ケニアの公式なルールが非公式なルールに補完されている現況とともに明らかにしました。
当初計画した現地調査はできませんでしたが、充実した研究環境を整え、研究成果を重ねることができたのは、本助成を賜ることができたからです。改めて皆様に感謝を申し上げます。
藤井 広重(2021)「国際刑事裁判所をめぐるアフリカ連合の対外政策の変容—アフリカの一体性と司法化の進捗からの考察」、『平和研究』 57 巻、137頁から165頁。 https://doi.org/10.50848/psaj.57007
藤井 広重(2022)「 ケニアにおける司法化する選挙と2022年大統領選挙の行方――司法化の進捗は選挙暴力を防ぐのか?――」、『 アフリカレポート』 60 巻、7頁から18頁。 https://doi.org/10.24765/africareport.60.0_7
人文・社会系領域