深澤 遊 Yu Fukasawa
東北大学 大学院農学研究科助教※助成決定当時
2019稲盛研究助成生物・生命系
- 採択テーマ
- 倒木の腐朽型が樹木実生の倒木上更新に与える影響の解明
- キーワード
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- 研究概要
- 森林生態系を構成する多くの樹種において、倒木上で次世代の実生が更新する現象(倒木上更新)が知られています。私たちのこれまでの野外調査から、倒木の「腐朽型」が樹木実生の更新に影響することが明らかになりました。
腐朽型とは、倒木の分解に主要な役割を果たす菌類の木材分解様式を類型化したもので、リグニンが分解された白色腐朽とリグニンが分解されずに蓄積した褐色腐朽に大別されます。
これまでに、国内外の11樹種について、褐色腐朽した倒木に更新しやすい樹種と更新しにくい樹種があることがわかってきました。腐朽型は気候条件や森林撹乱等の影響を受けて大きく変動するため、より多くの樹種の実生において腐朽型に対する応答とそのメカニズムを明らかにすることは、気候変動や森林破壊が森林生態系の動態に与える影響を予測する上で非常に重要です。
しかし、野外で自然に定着した実生の観察に基づく調査では、統計解析に耐えうるデータを取れる樹種は限られる上、環境条件を制御することが難しいため、多種の実生において腐朽型に対する応答とそのメカニズムを明らかにするには限界がありました。これらの課題を克服するため、本研究では環境条件を揃えた圃場における育苗実験により、腐朽型が樹木実生の生存・生長に与える影響を調べます。