平岩 徹也 Tetsuya Hiraiwa

東京大学 大学院理学系研究科助教※助成決定当時

2018稲盛研究助成理工系

採択テーマ
上皮組織の能動的な形態形成を実現する数理モデルの発展と検証
キーワード
研究概要
多くの動物の一生は一個の細胞から始まり、細胞が増殖や変形、遊走などといった動的な過程を繰り返すことで複雑で多彩な形が作りあげられます。この過程は外からの助けに基本頼ることなく、かつ生き物としての機能を常に維持し続けながら達成されます。このように見事な生き物のうごきや形づくりの過程を実現可能にしている背後に、一体どんな力学が潜んでいるかについては、まだまだ解明されていないことが数多く残されています。
 本研究で私はその中でも特に、上皮と呼ばれる組織の動きに潜む力学を明らかにすることを目指し、その動きについての数理モデルを構築し、発展させていっています。多細胞生物の身体は上皮細胞とよばれる細胞の集まりからなるシート状組織で覆われています。そして動物の形づくりの過程においては、この上皮細胞のシート構造が能動的に動くことが重要な役割を果たしています。この上皮組織の動きはバーテックスモデリングと呼ばれる、敷き詰まった上皮細胞の集団をポリゴンで模倣する手法で記述できます。私たちはこのポリゴンに模倣する手法を基にして、上皮細胞シートの能動的動きを実現する数理モデルを構築しました。この数理モデルでは、個々の細胞のキラリティ(左右性)を利用して組織全体の能動的な一方向運動を実現しています。今はこの数理モデルをより詳しく調べたり、様々な実験と比較できるよう拡張を行ったり、新しいアイデアによる一方向運動を実現するモデルを構築したりといった、発展的な研究を行っています。

助成を受けて

本研究を実施するにあたって、稲盛研究助成を受けられたことは大変光栄であり、また身が引き締まる思いです。この研究をさらに発展させていって、生き物の形作りと色々な機能の発現の背後に潜む力学をひとつずつ描き出していければと思っています。

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