広瀬 久昭 Hisaaki Hirose

京都大学化学研究所特定准教授※助成決定当時

2023稲盛研究助成生物・生命系

採択テーマ
細胞内抗体送達ペプチドの細胞選択性機序解明
キーワード
研究概要
抗体医薬品は膜透過性がきわめて低いため、現状ではその標的は細胞外分子に限定されています。抗体を容易に細胞内へ送達する手法の開発は、抗体医薬品の疾患標的を大きく拡張できると期待されます。
当研究室にて開発された抗体細胞内送達ペプチド(L17E)は、抗体など任意の分子と混ぜるだけで、容易に細胞内へ送達することができます。しかし、L17Eがどのように生体膜と相互作用し、分子を送達可能にしているのか詳細は不明です。この分子基盤を解明することにより、さらに効率的な抗体送達手法の確立を目指します。

助成を受けて

稲盛研究助成に採択して頂き、心より感謝申し上げます。ものづくりを通しながら、細胞機能のメカニズムを解明し理解することで、応用への橋渡しができる研究を展開していきたいです。

研究成果の概要

抗体を含む高分子もサイトゾルに送達可能なL17Eペプチドはその送達機序の詳細は不明であった。本研究ではその送達効率が細胞種によって異なることに着眼し、L17Eの機能発現に重要な遺伝子を網羅的に探索し、検討を行った。その結果、KCNN4遺伝子によってコードされるカルシウム応答性カリウムチャネルKCa3.1の活性がL17Eによるサイトゾル送達に重要であることを明らかにした。今後は、今回明らかにした分子基盤をもとに標的細胞への更なる高効率な抗体送達技術開発が期待できる。


Kuriyama, M., Hirose, H.* et al. (2025) “KCNN4 as a genomic determinant of cytosolic delivery by the attenuated cationic lytic peptide L17E” Mol Ther doi: 10.1016/j.ymthe.2024.12.050.


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