池上 健一郎 Ken'ichiro Ikegami

京都市立芸術大学 音楽学部講師※助成決定当時

2018稲盛研究助成人文・社会系

採択テーマ
18世紀後半のドイツにおける「描く音楽」の研究:古典派時代の多元的な音楽文化の解明へ向けて
キーワード
研究概要
西洋音楽史において、ハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンが活躍した時代は「古典派時代」と呼ばれます。「古典classical」ということばが示しているように、そこには、後世の規範になるような、正統的で普遍的な作曲様式がまさにこの時代に確立した、というニュアンスが含まれています。
 しかし、この時代(18世紀後半から19世紀初頭)を研究していると、こんにち「古典的」と呼ばれるものとは相容れないような楽曲も数多く作曲され、人々の支持を得ていた様子が浮かび上がってきます。どうやら、さまざまな作曲様式や音楽観の潮流が共存し、それらが複雑に交わり合いながら当時の音楽文化を形作っていた、というのが実情のようなのです。それは三巨頭の代表作だけを引き合いに出しても、決して語り尽くせいないものと言えるでしょう。

 わたしは、後世の歴史記述においてすくい取られることがなかった(あるいは意図的に排除された)潮流に目を向け、その意義を18世紀的な地平から改めて検証することに関心を抱いています。その一環として、本研究では〈描く音楽〉または〈音楽的絵画〉と呼ばれて人気を博した、何らかの事象(鳥や動物の鳴き声、自然の音や現象など)を具体的に描写する音楽を調査します。

助成を受けて

ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの陰に隠れて今ではほとんど知られていない音楽に光を当てるという、地味で地道な研究課題を採択していただき、大変感謝しています。本研究での成果を通じて、18世紀音楽文化の広大な裾野を知っていただければ幸いです。

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