金属/半導体界面での「導電性」の制御を、分子双極子という「絶縁体」で行おうという試みが面白いと思います。
有機発光ダイオード(OLED)の電極/有機半導体界面における効率的なキャリア注入は課題が多く残されている。電極/半導体界面に電気双極子が存在すると、真空準位がシフトするためキャリア注入が向上することはよく知られている。本研究では、自発分極を持つ極性ポリマーとしてポリ(フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン)[P(VDF/TrFE)]を用いた。P(VDF/TrFE)を正孔注入層としてインジウムスズ酸化物(ITO)電極表面にスピンコート成膜した結果、真空準位シフトによりITO電極からの正孔注入を増強した。その成果としてデバイスの駆動電圧を下げることができた。さらに、アニール温度依存性が観察された。正孔注入効果のメカニズムを調べるため、P(VDF/TrFE)層の薄膜物性を測定した。アニール温度の異なるP(VDF/TrFE)層は、表面特性に違いはないが、薄膜構造に大きな違いが見られた。これらの結果から極薄P(VDF/TrFE)層の構造変化により、OLEDのホール注入が著しく向上したことを明らかにした。 Fukazawa, R., Maegawa, Y., Morimoto, M., Matsubara, R., Kubono, A. and Naka, S. (2023), Hole Injection Characteristics and Annealing Temperature Dependence for Organic Light-Emitting Diodes Using Spontaneous Polarization. Phys. Status Solidi A, 220: 2300161. https://doi.org/10.1002/pssa.202300161
理工系領域