生命を形作る遺伝情報は、細胞核内の染色体DNAに格納される。この染色体DNAを娘細胞や子孫に正しく伝承することは、生命や種の維持の根幹に関わる重要な課題であり、その異常は癌や様々な遺伝性疾患の原因となる。この染色体伝承において中心的な役割を果たすのが、細菌からヒトまで保存されたStructural Maintenance of Chromosomes (SMC)複合体であり、ヒトにはコヒーシン、コンデンシン、SMC5/6と呼ばれる3つの複合体が存在する。私は、目的遺伝子産物を瞬時に分解する技術、オーキシンデグロン法を中心に、これらSMC複合体の分子細胞遺伝学的な解析を、ヒト細胞を用いて行っている。これにより、SMC複合体の細胞内における役割を理解することに加え、これらの複合体の異常が原因となる様々な疾患の分子機構の解明を目指している。