老・病・死は、誰もがいずれ直面することです。その事実は変えられませんが、それらとどの様に向き合うかを決める、自らの「意識」は変えることができます。
アドバンス・ケア・プランニング(Advance care planning: ACP)は、老・病・死に絶望するのではなく、希望を持って自分らしく「生きる」ための話し合いです。ACPは、「人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス」と定義され、その有用性は多く報告されています。しかし、日本人の多くはACPのきっかけを得られず、十分な話し合いを持たないまま人生の最終段階(End of Life: EOL)に至ります。これがEOLにある患者や家族の苦悩のみならず、医療従事者の倫理的ジレンマを深刻化させており、課題解決に向けた取り組みが求められます。
そこで本研究では、ACPを動機付ける機会として、健康な一般市民を対象に、自分の価値観やEOLに希望する医療・ケアについて考えるための支援ツールを開発し、そのツールを活用したACP啓発プログラムを実施しました。調査の結果、研究対象者は、本プログラムに参加したことにより、EOLやACPへの興味・関心が高まり、ACPへの準備性が向上していました。さらに、約9割の対象者がプログラム参加後にACPの話し合いを行っていました。これらのことから、我々の開発したACP支援ツールは、我が国のACP普及啓発活動において、幅広く活用できる可能性があることが示唆されました。
人文・社会系領域