竹之内 沙弥香 Sayaka Takenouchi

京都大学 大学院医学研究科准教授※助成決定当時

2020稲盛研究助成人文・社会系

採択テーマ
最期まで自分らしく生きるための話し合い:市民へのアドバンス・ケア・プランニング支援ツールの開発と評価
キーワード
研究概要
誰もが⼤切にしていることを最期まで⼤事にし、病気があっても希望を持って生きることを⽀援するために、ご本⼈が⼤切な⼈や医療者とこれからの事について話し合えるようなツールを考えます。

研究成果の概要

老・病・死は、誰もがいずれ直面することです。その事実は変えられませんが、それらとどの様に向き合うかを決める、自らの「意識」は変えることができます。

アドバンス・ケア・プランニング(Advance care planning: ACP)は、老・病・死に絶望するのではなく、希望を持って自分らしく「生きる」ための話し合いです。ACPは、「人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス」と定義され、その有用性は多く報告されています。しかし、日本人の多くはACPのきっかけを得られず、十分な話し合いを持たないまま人生の最終段階(End of Life: EOL)に至ります。これがEOLにある患者や家族の苦悩のみならず、医療従事者の倫理的ジレンマを深刻化させており、課題解決に向けた取り組みが求められます。

そこで本研究では、ACPを動機付ける機会として、健康な一般市民を対象に、自分の価値観やEOLに希望する医療・ケアについて考えるための支援ツールを開発し、そのツールを活用したACP啓発プログラムを実施しました。調査の結果、研究対象者は、本プログラムに参加したことにより、EOLやACPへの興味・関心が高まり、ACPへの準備性が向上していました。さらに、約9割の対象者がプログラム参加後にACPの話し合いを行っていました。これらのことから、我々の開発したACP支援ツールは、我が国のACP普及啓発活動において、幅広く活用できる可能性があることが示唆されました。


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