このたびは、稲盛財団研究助成にご採択いただき、心より感謝いたします。ご支援をもとに、より一層研究に励み、世の中をより良くすることに貢献したいと考えています。
Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)から成る合金を、組成を変化させてアーク溶解法により作製し、形状記憶合金としての駆動温度や結晶構造を系統的に調査しました。その結果、49.7Pd–(50.3-x)Ti–xZr (at.%)三元系合金(x = 15–20)およびそれらにNiを僅かに添加した合金が、100℃以上の駆動温度と高い合金強度、大きな形状回復ひずみ量を有する形状記憶合金の候補として選定できました。また、それらの候補の中から49.7Pd–30.3Ti–20Zr (at.%)合金に着目し、熱処理条件の最適化を検討しました。熱処理温度および時間が、駆動温度や析出物の種類およびサイズに及ぼす影響を明らかにすることで、最適熱処理温度(650℃)の条件下において、非常に小さな応力(200 MPa)でのひずみの発生と、その後の加熱による4.5%もの大きな形状回復を伴う、優れた形状記憶効果を実測することができました。駆動回数は1回~数回程度に制限されるものの、例えば宇宙探査機における太陽電池パネルの展開などの用途に適する、新しい形状記憶合金を開発できました。
理工系領域